はじめに:絶望の淵からアメリカの大学卒業へ
うつ病の暗いトンネルの中、フルタイムの仕事に追われる毎日。そんな40代の私が、GPA3.85以上という自分でも信じられない成績で、学費無料のアメリカの大学「University of the People (UoPeople)」のコンピュータサイエンス学士課程を卒業しました。
これは、サクセスストーリーではありません。TOEIC 350点からの挑戦、理不尽なピアレビュー、休みなく続く課題地獄。何度も心が折れそうになりながら、それでも自分のペースで一歩ずつ進んだ、ある社会人の泥臭い記録です。
もしあなたが、 「働きながら大学で学び直したいけど、時間もお金もない」 「うつ病や体調不良で、新しい挑戦を諦めかけている」 「40代からでも、人生を変えるきっかけが欲しい」 そう感じているなら、この記事が「自分にもできるかもしれない」という希望の光になれたら嬉しいです。
【自己紹介】TOEIC 350点・40代の私がUoPeopleを選んだ理由
私は、外資系のIT企業で働く40代の会社員です。10年以上うつ病と付き合いながら、障害者雇用でフルタイムで働いています。
キャリアの折り返し地点を意識し始めた頃、学び直したいという気持ちが芽生えました。ちょうど趣味でPythonの勉強を始めたところでしたが、私には大きな、そして長年の壁がありました。英語です。
英語が嫌いで10年ぐらい前に最後に受けたTOEICのスコアは350点。正直、もううんざりでした。単語アプリで勉強しても、簡単な英語の絵本すら読めない。
「もう二度と、TOEICのための勉強はしたくない!」
そう決意したけれど、海外ドラマや映画を見るのは好きだし、まったりとその後は単語アプリをやったりオンライン英会話をやったりしてました。でもTOEICは日本企業はどこも求めるし、TOEICのために、これ以上時間も心もすり減らしたくない。単語アプリで学んだ英語は海外ドラマで結構出てくるので面白いなぁとは思っていました。
そう固く決意した時、ふと思ったのです。 「英語の勉強が嫌なら、興味のあるプログラミングを英語で学べば、本当に使える英語が身につくじゃないか?」
この無謀とも思える、しかし私にとっては画期的なアイデアが、UoPeopleへと導いてくれました。
英語の壁:TOEIC 350点からのどう入学するかUoPeopleにESLあるじゃん!
TOEICの勉強はきっぱりやめましたが、英語の学習自体をやめたわけではありません。ただ、その方法を「テストのため」から「実際に使うため」へと大きくシフトさせました。私が毎日コツコツと続けていたのは、以下のようなことです。
私が実践した「使える英語」の学習法
- 単語学習の継続 (iKnow!): 単語アプリ「iKnow!」を使い続けましたが、選ぶコースを変えました。TOEIC対策ではなく、「TOEIC 800点コース」や「ビジネス英語」「英検準1級」など、より実践的な語彙が増えるコースを毎日こなしました。
- 多読 (ニュース & 絵本): DMMが提供する英語ニュースサイトを毎日1記事読むことに加え、図書館で英語の子供向けの本を借りて読むことも日課にしていました。簡単な物語から英語に触れることで、文章への抵抗感をなくしていきました。
- 多聴 (ポッドキャスト & エンタメ): ランニング中は、海外のポッドキャストを聞き流して耳を慣らしました。また、Netflixの海外ドラマは、日英同時字幕を表示できるChromeアドオンを使って「英語音声・日英字幕」で視聴。逆に日本のアニメは「日本語音声・英語字幕」で見ることで、楽しみながら自然な表現をインプットしていました。
- ライティングの実践 (日記交換): 海外の人と日記を添削し合うサービスを利用し、毎日英語で日記を書き、ネイティブに添削してもらいました。同時にお返しとして、日本語を学ぶ相手の日記を添削することで、言語交換が成り立っていました。
- 会話の実践 (Discord & オンライン英会話): 日英の言語交換ができるDiscordサーバーに参加し、海外の友人と通話したりチャットしたりして、とにかく「楽しく遊ぶ」ことを意識しました。これに加えて、オンライン英会話も利用して、話す機会を確保していました。
このように、日常生活のあらゆる場面に英語を取り入れ、「自分が楽しいと思える方法」で続けていました。しかし、ただダラダラとやっていたわけではありません。UoPeopleのESLコースの受講期間を含めた約1年間は、人生で最も英語を集中的に勉強した時期でした。 この集中的な学習期間があったからこそ、その後の専門課程の膨大なリーディングにも対応できたのだと思います。
ESLコースのリアルと「0点事件」
UoPeopleのESLコースは、オンライン英会話とは全く違います。毎週、大量のリーディングとライティングの課題があり、楽ではありません。プレゼン動画を録画して投稿する、というスピーキングの課題もありました。
しかし、この「強制的に英語を読み、書く」環境こそが、私の英語力を飛躍的に向上させてくれました。
そして、コースの最後には、本課程への入学をかけた最終試験が待っていました。私はここで、人生最大級の失敗をします。
緊張と焦りで時間配分を間違え、結果はまさかの0点。
タイムアップで回答を送信できなかったのです。さすがに心が折れかけ、「もうダメだ」と思いました。
しかし、ここで諦めたら今までの苦労が水の泡です。私はすぐに気持ちを切り替え、UoPeopleが入学資格として認めている外部の英語試験を探しました。そして、海外のオンライン試験サイトでなんとかCEFR C1レベルの資格を取得。この証明書を使って、晴れてコンピュータサイエンス課程への入学許可を得ることができたのです。
結論:UoPeopleのCSコースは「話せなくても」卒業できる
この一連の経験を通して、私が最も伝えたいこと。それは、UoPeopleのコンピュータサイエンス課程は、英語がペラペラに話せなくても卒業できる、ということです。
ESLコースにはスピーキングの課題がありましたが、その後の専門課程では、学生同士で会話するような課題は一切ありませんでした。求められるのは、主に以下の3つのスキルです。
- リーディング力: いろんな課題テキストをとにかく読むし、自分で英語で検索して参考文献を探す
- ライティング力: 毎週のエッセイやレポートを、論理的に記述する力。
- リスニング力: 講義動画の内容を理解する力。
スピーキングに自信がないからと、諦める必要は全くありません。私のようにTOEIC 350点からでも、やり方次第で道は拓けます。この記事が、あなたの挑戦を後押しするきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。
【単位移管戦略】卒業までの時間と費用を半減させる方法
UoPeople入学を決める前に、私は徹底的に情報収集を行い、卒業までの道のりを最短・最安にするための戦略を立てました。
UoPeopleでは卒業に必要な単位の**最大75%(90単位)**まで外部から移行できます。これを使わない手はありません。私が単位を稼いだ方法は以下の通りです。
- 日本の大学の単位: 以前卒業した大学の単位を移行しました。
- Sophia Learning: UoPeopleの提携サービス。オンラインで安価に単位を取得できます。
- 業界資格(Coursera, Microsoft):
- Google ITサポート: CS 1104 (Computer Systems), CS 2204 (Communications and Networking), CS 2301 (Operating Systems 1)
- Google データアナリティクス: CS 3306 (Databases 2)
- Microsoft Azure DP-900: CS 2203 (Databases 1)
下準備さえしっかりすれば、多くの単位を移行することは十分に可能です。 私はこの戦略のおかげで、UoPeopleではコンピュータサイエンスの核となる専門科目(10科目)に集中できました。
最大の壁:うつ病とフルタイム勤務と勉強の両立
高いGPAで卒業できたと聞くと、無理をしたように思われるかもしれません。しかし、実際はその逆です。私が卒業までたどり着くために最も大切にしていたのは、**「絶対に無理をしない」**ことでした。
- あえて「亀のペース」を貫く勇気 UoPeopleは1年に5学期(ターム)ありますが、私は**「1タームに1科目だけ履修する」**という自分だけのルールを決め、卒業までそれを貫きました。周りのペースは気にしない。この「ゆっくりでも着実に進む」という戦略が、燃え尽きを防ぐ最大の要因になりました。
- 自分の「心と体の声」を最優先する うつ病の波は容赦なくやってきて、1週間仕事を休んで寝たきりになったことも一度や二度ではありません。もう課題も全部やめてしまおうか。そう思った夜もありました。でも、不思議と何もしないでいるとモヤモヤしてきて、結局ベッドの上でPCを開いていました。気づけば、「課題をやらないと気持ちが悪い」というレベルまで、勉強が私の生活の一部になっていたのです。 もちろん、本当に、本当に辛かったですが、この経験が私を強くしてくれました。
UoPeopleコンピュータサイエンス学部のリアル
驚くことに、コンピュータサイエンスの学士課程では、生徒同士で会話するような課題は一切ありませんでした。 求められるのはリーディングとライティングの能力です。つまり、英語がペラペラに話せなくても、卒業することは十分に可能です。
想像を絶する毎週の課題とスケジュール
UoPeopleの学習は甘くありません。標準的な1週間のタスクは以下の通りです。
- リーディング: 約100ページほどの英語の技術書を読む。
- ディスカッション: 文献を引用しつつ、500〜700単語程度のエッセイを投稿。
- プログラミング課題: 実際にコードを書いて提出。
- ラーニングジャーナル: 1週間の学びを700単語程度のエッセイで提出。
このサイクルが、夏休みも年末年始も関係なく、約9週間続きます。唯一の休みは、ターム間の1〜2週間だけ。この relentless なペースは、本当にきつかったです。
学習内容と印象的だったコース
事前の単位移管戦略のおかげで、UoPeopleで実際に履修したのは、コンピュータサイエンスの核となる専門科目だけでした。 私が履修した科目の中での、個人的な感想は以下の通りです。
- UNIV 1001 (Online Education Strategies): ウォーミングアップに最適な、簡単なチュートリアルコースでした。
- 特に難しかったコース:
- CS 3303(データ構造): 個人的にはこれが一番難しかったです。
- MATH 1302(離散数学): 泣きそうになるほど難しく、日本語の数学書を買い込んで勉強しました。
- CS 1102 / CS 1103(Javaプログラミング): 「こんなに大変なの!?」と衝撃を受けるほど難易度が高かったです。
- 噂より簡単だったコース:
- 多くの学生が「大変」と噂していた**CS 2401(ソフトウェアエンジニアリング1)**や、**CS 4407(データマイニングと機械学習)**は、私にとっては意外と簡単でした。コースには相性があるのかもしれません。
UoPeopleで得られたスキルと新たな発見
独学である程度の知識はありましたが、体系的に学んだからこそ得られたものは確かにありました。
- Javaとの出会いとオブジェクト指向の深い理解: このコースがなければ、私はおそらく一生Javaに触れることはなかったでしょう。深夜までコードを書き続けるほど辛い授業でしたが、オブジェクト指向の考え方を深く理解できました。
- 実践的なサーバー操作スキル: Linuxの操作やVimエディタの使い方、バッチファイル作成など、サーバー管理の基礎に触れるコースは非常に面白かったです。
- アルゴリズムと計算コストの視点: エンジニアがどのように工数を見積もるのか、その考え方に触れられたのは大きな発見でした。
ピアレビューの罠と光明
UoPeople最大の特徴であり、最大のストレス源がこの相互採点(ピアレビュー)です。理不尽な評価でうつ病が悪化したこともありましたが、コースのレベルが上がるにつれてレビューの質も安定しました。この経験を通して、異文化の相手に分かりやすく説明する力が鍛えられたのは事実です。
【卒業までにかかった全費用】合計約42万円の内訳
私が卒業までにかかった総費用は、合計で約42万円(1=145円換算)でした(注:私が在学していた時の試験評価料は120でしたが、現在は$140に値上がりしています。以下の計算は現在の料金で算出し直したものです。)
UoPeopleに直接支払った費用 (約36万円)
- ESL(英語コース)費用: 合計 $520(約75,400円)
- 入学金:$100
- 試験評価料:$140 × 3コース = $420
- 学士課程費用: 合計 $1,953(約283,200円)
- 入学金:$60
- 単位移管費用:$493
- 試験評価料:$1,400 ($140 × 10コース)
外部サービス・諸経費 (約6万円)
- Sophia Learning: 合計 $198(約28,700円) 私が取得した主なコースは以下の通りです。
- ENGL 1102 (English Composition 2)
- MATH 1280 (Introduction to Statistics)
- MATH 1201 (College Algebra)
- SOPH 0020 (Introduction to Ethics)
- AHIST 1401 (Art History)
- CS 2205 (Web Programming 1)
- MATH 1040 (Calculus I)
- Coursera, Microsoft資格:無料(無料期間やバウチャーを利用) 移管できた単位は以下の通りです。
- Google IT Support: CS 1104, CS 2204, CS 2301
- Google Data Analytics: CS 3306
- Microsoft Azure DP-900: CS 2203
- Ucredo(単位変換サービス): $180(約26,100円)
- 諸経費(証明書発行など): 約2,000円
【コラム】UoPeopleの隠れたメリット
英語学習としてのUoPeople
月1万円のオンライン英会話より、UoPeopleのESLコースの方が英語の読み書き能力は確実にレベルアップすると断言できます。同じ金額を投資するなら、学位にも繋がるこちらの方がおすすめです。
意外と大きい!UoPeopleの学割メリット
在学中は、様々な企業の学割が利用できます。
- GitHub Copilot (2年無料)
- Office 365 (無料)
- Amazon Prime Student (半額)
- Gemini Advanced (1年無料)
- YouTube Premium, Spotify Premium (学割料金)
- その他、Apple製品やAdobe製品など
これらをフル活用すれば、年間の節約額はかなりのものになります。
【結論】結局、UoPeopleはどんな人におすすめ?
私の経験を踏まえて、目的別に正直な感想をまとめます。
- 高卒で学位が欲しい人:◎ 大いにおすすめ! 「アメリカの大学の学位」が手に入ります。単位移管をうまく使えば、費用も時間も大幅に節約できます。
- 海外で働きたい、留学したい人:○ おすすめ 海外でのキャリアを考えているなら、学位は間違いなくプラスに働きます。
- 純粋にプログラミングを学びたい人:△ 他の選択肢も検討してみて 今はChatGPTのような優秀なAIがいます。AIに相談しながら自分で何か作る方が、実践的なスキルは早く身につく可能性があります。
- 未経験からエンジニアに転職したい人:△ 国内資格の方がコスパが良いかも 日本国内での転職なら、基本情報技術者試験のような国内資格の方が費用対効果が高いかもしれません。
授業レベルの物足りなさについて
正直なところ、多くの専門科目は「入門編」という印象でした。例えば、機械学習のコースでは、期待していたPythonでのコーディングはなく、Rを少し触る程度。あくまで、広範な基礎を体系的に学ぶ場と捉えるのが良いかもしれません。
最後に:暗闇の先にあったもの
UoPeopleを卒業した今、私の手元には一枚の卒業証書があります。そこには**「GPA 3.85以上」**という、自分でも信じられないような数字が刻まれています。
しかし、私が得たものは、この数字だけではありません。
うつ病と闘いながら、仕事と勉強を両立させた日々は、「私だって、やればできるんだ」という揺ぎない自信をくれました。そして、もし将来転職することがあっても、「常に新しいことを学び、困難な状況でも諦めずに最後までやり遂げることができます」と、この経験そのものを自分の強みとして語れるようになったことが、一番の財産だと思っています。
もし、この記事を読んでいるあなたが、かつての私と同じように暗闇の中にいるのなら、伝えたいことがあります。 焦らなくていい。あなたのペースでいいんです。 40代からだって、新しい挑戦はできる。 ほんの少しの勇気を出して、小さな一歩を踏み出してみてください。
その一歩が、想像もしていなかった未来に繋がっているかもしれません。